⑭ 玩具のピアノとの付き合い方

 某有名キャラクターのトイピアノをネットオークションで落札した。楽器メーカーの製品ではないので、いかにも幼児の玩具といったかんじではある。

 しかしなぜか音が素晴らしい(とわたしは勝手に思っている)。このトイピアノは残響音が妙に耳に残るのだ。

 実はこれと同じものを十年ほど前に、リサイクル店で百円で買っている。単なる気まぐれの蒐集のつもりだったのだが、音が気に入ったので、演奏用にしたくなった。しかし問題があった。音程の狂いである。正確に合ってないという程度ではなく、聴けばそれと分かるレベルである。

 そこで音程の調整をすることにした。低めになっている音のピッチを上げるために発音体の金属棒をヤスリで削るわけだが、実際にやってみると、削るときの振動で棒が根元からポキポキ折れてしまうのだ。結局途中で諦めてしまい、音がいくつか出なくなったままになった。

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 写真の右のようなものが、左のキャラクターの蓋のすぐ下に入ってます。

 文鎮みたいなものに付いている沢山の細い金属棒がそれぞれの鍵盤に対応しています。金属棒が長いほど低音になり、短いほど高音になるので、音程が低めに狂っている棒は少し削って短くすればよいわけです。

 錆びてます。これも積年の証でしょうか。本体に、1976,1991という印刷があるのですが、これは製造年に関係した数字でしょうか。

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  金属棒の根元がくびれて細くなっているので、削るときの振動で折れやすいのです。くびれは、文鎮状のものに開いている穴に収まるようになっています。

  音程が高めの場合は、理屈では、削ることの反対をすればいいはずですが、このようなことをする業者がいるらしくて、どうするのかというと、棒に半田付けするという話を知り、さっそくやってみましたが、なんかあんまりしっくりこなかったです。

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 鍵盤はシーソーのようになっていて、指で押すと反対側が上がり、ハンマーを跳ね上げます。その勢いでハンマーが金属棒に当たり、音が出る仕組みです。だからあまりにも弱く鍵盤を押した場合は、ハンマーが金属棒の地点まで跳ね上がらないので、音が出ませんが、まあ普通に叩けば音は出ます。

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 ハンマー部分の小さな板状のものが鍵盤と当たる位置にスポンジのようなものが付いていて、これは鍵盤が当たるときの衝撃音を抑えるためのものでしょう、

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 ハンマーは小さな板状のもので本体に繋がっていて、鍵盤の上がる側の先端のすぐ上にそれぞれ配置されています。板状のものは根元から折れ曲がるようになっています。丈夫な厚紙のようなもので出来ているみたいです。、

 

 ハンマーが並んでいる上に金属棒がこんなかんじで乗ります。実際は上蓋にネジ止めしてあります。

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 こんなふうに、ハンマーが金属棒を下から叩くわけです。ハンマーは鍵盤に跳ね上げられた勢いで金属棒に当たる地点まで上昇するだけなので、鍵盤を指で押したままの状態でも、ハンマーは金属棒から離れて落ちます。だから音がハンマーで抑えられることはありません。板状のものは本体にぶら下がったように付いているだけなので、ハンマーは自然に下へ落ちます。

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 シンプルな仕組みです。小学生の夏休みの工作とかでも出来そうです。このトイピアノは最近のものではないので、こういう簡素な構造なのかもしれませんが、複雑なメカニカルな部分が無いので、余計な雑音があまり出ません。

 最近のトイピアノでハンマーがメカニカルな構造では、カチャカチャ音が響く場合がありますが、きっちりと設計されたものを作りさえすれば良いとは限らないのではないかと思います。

 

 一般的なトイピアノ(カワイ製とか)のほうが音は綺麗であり、音程もだいたい安定しているだろう。しかしそれだけではなにか物足りないのだ。

 このトイピアノの残響音が際立つのは、もしかすると楽器としての出来が洗練されていないからかもしれないが、そんなことはどうでもいいのだ。なんとなくこの音がいい。それだけでじゅうぶんなのだ。

 そういうわけで、このたびネットで同じものを探してみた。けっこう古いものなので、どうかと思っていたが、案外あっさり見つかり、で、完全な状態のものが先頃わたしの手元に届いた。最初に買ったものと同じく、やはり音程の狂いは明らかだった。しかしもう余計な事はしないつもりだ。自分一人が音に酔いしれるのに、音程が合っていないなどは些細な問題である。このトイピアノの観衆は自分だけ、それが分かっていれば音程の狂いなどは愛嬌というものである。